貞操帯の起源は中世ヨーロッパの十字軍遠征時代まで遡ります。
隣国との戦争が絶えないこの時代のヨーロッパでは成人男性は遠方へ遠征することが多く、家庭を留守にすることが頻繁にありました。
夫が留守の間、残された妻が他の男と性行を行い不貞となることがないよう、純潔の維持を目的として施錠可能な鉄製の下着を身につけさせた ことが起源とされます。
当時の貞操帯は金属の加工技術が発展途上であったため作りや材質が粗く、長期間の装着は非常に難しかった と想像されます。
また排尿や排便などの日常生活も相当な不便さが伴ったはずであり、実際に長期装着ができたかどうかは分かりません。
このため上記ような日常的な利用ではなく、刑罰や拷問のための道具 として用いられたとされる説もあります。実際に中世ヨーロッパでは魔女狩りのような虐待行為も頻繁に行われていたことが確認されていることから、貞操帯がそのような目的で利用されたとしても不思議ではありません。
自慰行為は神に背く悪業
さらにキリスト教では肉欲や快楽に溺れることは神に背く行為とされており、自慰行為を悪とする 考え方がありました。また近代においてもプロテスタントの活動が活発な時期には自慰行為の背徳性についての教えが説かれました。
特に青少年の自慰行為は現代でも問題視する考え方があり、自慰行為を抑制するために開発された様々な貞操帯 の特許案やデバイスも見つかっています。
貞操帯については証拠となる文献等が少なく、どのような形でどの程度使用されたかについて明確になっていないのが現状ですが、いずれにせよ中世ヨーロッパ時代には様々な貞操帯が見つかっていることから、当時何らかの形で貞操帯が利用されたことは間違いありません。
高性能な現代の貞操帯
現代では金属加工技術が大きく向上したことや 3Dプリンターの登場もあって、実に多くの実用可能な貞操帯が世に登場しています。今後もその種類は増えていくでしょう。
また、これらの技術革新に伴って現代の貞操帯は 単に性交渉を防止するだけでなく、自慰行為までをも防止できる 機能を獲得し、貞操帯の利用目的に大きな変化をもたらしました。
現在では望まない性交渉を防止するためだけでなく、SM/BDSM 的な趣向や禁欲、カップルの愛を誓う純潔装置などとして世界中の人に利用されています。
中世ヨーロッパに端を発した貞操帯は、様々な環境の変化や技術革新を経て現在の私たちを楽しませてくれるものになっています。
写真:Gigazine, Medieval Torture, Pinterest, Micro Fabricator